「春の妖精」といえば「カタクリ」をおいては語れまい。カタクリこそ妖精たちの女王だ。

先代の遺した記録によると、昭和50年に鹿島槍スキー場から来たひと苗を祖先としているらしい。45年後の今、庭のあちらこちらに群落を形成しているのだからその繁殖力には驚かされる。うつむいて咲くその様子は「楚々」という言葉がピッタリなのだが、その実、なかなか逞しいのである。

繁殖戦略の一つがタネに付くエライオソームという付属体で、その中に含まれる物質がアリの好物なのだそうだ。巣穴まで運んだ後、アリはエライオソームだけ切り離して巣に運び込むので、残されたタネは上手くいけば新天地で発芽することになる。そうやって、カタクリはアリという「誘惑に目がない昆虫」を利用して生息範囲を広げているのである。知恵者じゃのう!

さて、めでたく発芽したばかりの苗は極小の葉が1つだけ。葉が2枚になって初めて花を付ける資格が出来るのだが、それまでには数年もかかるとのことである。このか弱い幼苗を踏みつぶさないようにと、妻が立てた白い札が通路の至るところにびっしりと立っていて、「あらよっ!あらよっ!」と人が避けて歩く姿は我が家の春の風物詩でもある。

ところで、「妖精」という言葉の由来になったその「姿の消し方」が知りたくて、観察を続けたことがある。

なんと!葉っぱがトロントロンのゼリーを含んだ透明な袋状になり、最後には溶けるようにして地上部の姿を消すのだ。「お主、見たなあ〜」と、女王の怒りを買っていないと良いのだが…。