私の憧れのジュエリー工房「Gimel」のアトリエ見学ツアーに行って来ました。ツアーと言っても参加者は私ども夫婦のみで、主催者提供のハイヤーで自宅からの往復。感染予防には細心の注意を払って頂いての小トリップでした。
芦屋市に到着して、先ずは「ベリーニ」でのランチを愉しみました。ここはGimel社の前身時代に手掛けられたお店で、漏れ聞こえるスタッフとお客様の会話からも、今も地元の方に愛されるお店だという事が伝わってきます。
六甲の山を標高500メートルほどまで登った辺り、一区画が一千坪を下らないという高級住宅地の某所にアトリエは静かに佇んでいました。玄関では、催事で顔馴染みになった社員さん達がお出迎え。促されて中に入ると何とも言えない気品が漂っています。壁に掛かった暖かみのある絵画と言い、古壺に生けられた立派な柿の楽しげな様子と言い、これ見よがしのラグジュアリーさとは一線を画する雰囲気です。
応接室に通じるスペースにはピアノがあって、若い男性が演奏中。先程から流れていたBGMが生演奏だったということです。しかも、彼はGimel社の社員ということで、何とも芸術的気風溢れる会社ですね。
やがて社長の穐原かおるさんがいらしゃって、お手製の干し柿を頂きながら窓の外、眼下に広がる鬱蒼とした森や遠くに光る大阪湾、さらにその奥の山並みといった景色を楽しんだり、作品が誕生する背景について伺ったりしました。お話を通じて一番心に残ったのは、彼女の仕事や暮らしを通じての半端ない美意識の高さでした。
例えば、絶景を楽しむために設けられたテラスに無粋は許さないという姿勢。落ちたら大怪我必至という場所なのに枠無しの強化ガラスが設置されているのです。施工側からすれば無難に枠付きのアクリル板にしたいところでしょう。「ここは譲れませんでした。」と微笑みながら仰っていましたが、凡人はここで躓くものです。私どもも業者に嫌がられたりしたら諦めてしまいますもの、トホホ…。
また、「美しい作品作りのためには美的な環境を」ぐらいは他の方でも仰るかも知れませんが、「真っ当な食生活があってこそ良い仕事が出来る」と言い切るのは相当の覚悟が要ることです。アトリエが麓の街にあった頃、若い職人さん達がお昼にコンビニ弁当や菓子パンで済ませているのをご覧になって、これではいけないと移転を決意されたとのこと。以来、社長自ら20名の社員の昼食を用意されているのです。自販機一台無く、麓へ買い出しに出るにも有料道路を往復するというこの立地でですよ!
想い起こしてみると、この「食」に対する姿勢に私は惹かれたのでした。デパートで開かれた展覧会で観たプロモーションビデオ。社員さん達のランチの光景に目が釘付けになりました。さすがにベリーニ並みのコース料理とまではいきませんが(笑)、美しい器に盛られたランチを楽しんでいらっしゃる様子に「私もここで働きたい!」と真剣に思ったものです。「食」は身体を作るだけでなく、その人の精神をも養います。真っ当な食事は全ての基本です。「中途半端なことなら初めからやらない方が良い」という言葉から、彼女の作品作りに対する真摯な態度が伝わってきます。
さて、いよいよ作品とのご対面。2階の廊下やギャラリーに代表的な作品や初めて目にする作品がずらりと並んでいます。可笑しいのは同行して頂いたデパート担当者が私以上に熱心に見ていらっしゃったこと。彼女達でもこれだけのカラーストーンを使用した作品を目にすることは叶わないことだそうです。Gimel側への矢継ぎ早のご質問に、さして知識を持たない私は大いに勉強させて頂きました。夫といえば、ジュエリーの輝きに当てられたのか値札の桁を完全に読み違えていて、驚きの価格のリングを私に勧めて来てびっくりコ〜ンでした。😅
最後にお庭を拝見したのですが、石塀に嵌められた8枚の型ガラスがラリックの作品だと知ったときには、はしたなくも騒いでしまいました。あのラリックが雨風に晒されている〜😱。20代の留学時代にオークションで買い求められたモノとかで、お若い頃から高い審美眼をお持ちだったことに改めてリスペクトの念を強くした次第です。私が20代の頃はどんなモノを買っていたかしら?千趣会の可愛いお皿?😅
バイヤー泣かせと言われる厳しい石選びに、妥協を許さない丁寧な仕事、それに加えて日本の美しい四季を余すところ無く表したデザイン。例えば、紅葉しかけの楓の緑から黄緑、黄色、オレンジと続く見事なグラデーション。小さな桜の花びらのピンクから白へと続く儚げなグラデーション。これらの石が曲面にさえ見事にパヴェセッティングされているのです。「未来のアンティーク」という世評も頷けるというものです。
宝飾品などに全く興味がなかった私が、世界に誇る工房に立っているという事実に私自身が驚く一日でした。春には「一目百本」という山桜がことの他美しいそうです。再訪の機会が与えられましたら望外の喜びです。
長文にお付き合い下さってありがとうございました。
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