N君、Kちゃん、元気にしていますか?アトリエの雪が消えてからは、じいさまとばあさまはずっとこちらで暮らしています。今年の夏休みもあなた達と逢えないのかと思うと、本当に残念です。

さて、ここのお庭には毎日可愛いお客さんたちが来てくれて、目と心を楽しませてくれています。じいさまがベランダのすぐ前に掛けた新しい巣箱では、シジュウカラが巣材運びに大忙しです。毎年来ていたリスさんも、「今年は遅いなあ…」と心配していたら5月14日に顔を見せてくれてひと安心しました。昨日は首輪を付けたワンちゃんまでがふらりとやって来て、ばあさまが差し出した手をなめて帰って行きました。リードを外してもらっているからか、嬉しそうな顔をしていましたよ。

今日は朝から雨。ぬれた木々の葉がきれいです。ぼんやりお庭を眺めていると、駐車場のあたりに動物の姿が…。昨日のワンちゃんかな?と思って注意して見てみると、ちょっと違うのよね。毛色がグレーっぽくて首輪もない…。「もしかして…」などと思っているうちにどんどんお庭に入って来て、ユキツバキの茂みからこちらを見るこの子は誰?

そう!ニホンカモシカだったのです!ずいぶん長い間見つめ合っていましたが、じいさまがカメラを取りに行こうとしたとたん、気配に気付いて森の奥に走って行ってしまいました。

ひいじいさまがここに小屋を建てて今年でちょうど50年。庭にニホンカモシカが現れたのは初めてのことです。だから、とても珍しいお客さまと思ったのですが、ニホンカモシカは縄張り意識が強い動物だそうで、この子も自分のテリトリーを見回っていただけなのかも知れません。そうなると、珍しい「お客さま」ではなく、珍しく姿を現した「地主さま」と言う方が当たっているかも知れないなあと思いました。

そう言えば何年か前に、お庭から道に出てきたタヌキとひょっこり出くわしたことがありました。振り返り振り返りしながら去って行くタヌキと目が合うたびに、「あんた、ダレ?」と言われているような気がしてなりませんでした。人間にしてみればタヌキの方が侵入者。でも、タヌキからすれば人間の方が侵入者なのよね。森の生き物は匂いや鳴き声で自分のテリトリーを他の生き物に知らせています。「ここは私の生きる場所だから入って来ないでね。」と。森にはたくさんの生き物がいるから、テリトリーが重なることも普通のこと。誰も独り占めには出来ないのです。でも、地面を見えない線で囲って、お金を払って自分のモノにしているつもりの動物がいます。それが人間です。おかしな生き物ですね。

ばあさまが大事にしているこの庭がニホンカモシカのテリトリーでもあるという事に改めて気付かされて、この庭に対する見方が変わりました。みんなが心地よい庭にしなくては…と。